2012-08-01から1ヶ月間の記事一覧

2012-08-29

ハニーのスペルが判らなかったから 甘い蜜を吸うことはかなわなかった ホネイフラッシュ 眩しさに焦がれていたはずなのに 日蔭が棲み家とパンツを直す 誰かが救ってくれるとでも思っているのだろうか ホネイフラッシュ 奈落の際で綱渡り

2012-08-27

遠くのほうから声がして 秋が来たと言っているような それでも朝から汗を拭うのに忙しくて 乗り遅れてしまった電車に懐かしい友だちが乗っていたのに気付く 遠くの方から声がして いずれは許されるのだからと言っているような それでも自由なようで何とも身…

2012-08-26

陽射しのなかを歩く 木陰を拾うとしても真上から照りつける夏の陽射しは容赦なくて 日傘を置き忘れてきたことを悔やむ 乾いた道筋に人の気配は見当たらず 蝉の鳴き声さえ 8月の暑さに耐え忍ぶばかりなのか うなじに滴る汗 何ゆえに私はこんな時間に歩いてい…

2012-08-24

遠くへ投げたはずなのに 何時の間にかその古いボールは足もとに転がっていた そんなものなのかも知れない 鉄橋下には乗り捨てられた自転車 タイヤの空気はとうに抜けていて 持ち主は誰なんだろう 悪戯されたのかサドルに裂かれた傷 キコキコとペダルを漕ぐ音…

2012-08-22

残暑と言うには暑すぎるから 青空に向かってダイブする 撥ねあがる雲の多さは初心者の証 上手なら誰ひとり気づかぬうちに雲の上 ハンモックでうたた寝としゃれこむ 今だ! そう決意しても足元は覚束ないままで スプーン一杯の幸せと引き換えに明日も生きる

2012-08-21

西瓜みたくに地球を割った ぷふっと不愉快な音を立てて真っ二つ これりゃ熟れすぎだなあ かと言って裏山のどっかに投げるわけにもいかず おかしく目鼻に口をくり貫いたら 軒先に地球をぶら下げる おや涼しげな いつのまにどっぷり夕陽は暮れてゆく

2012-08-20

いつの頃からか手を汚さなくなった 爪の間の汚れなど厭わなかった日々 懐かしくは思うものの 思い出は思い出のままで 外は雨模様 ひと雨ごとに訪れる秋の気配に 日焼けすることも無くなった指先をかざす

2012-08-19

マシュマロみたいな雲が浮かんでる ほんわかと優しげで 昨夕みせた荒ぶる姿はとても想像できなくて あれだけの雨降りだったのにね 緑は潤いを取り戻し伸びやかで 一瞬の出来事 総ては一瞬の出来事

2012-08-18

越えられなかったはずの壁を越えていた 振りかえったとしても何も見出せず そこにあったのは静けさを取り戻した浜辺を掠める海鳥の翼 これで良かったのか 虚しさに似た思いを捨てきれず 赤く焼けた腕をさする

2012-08-17

なんだかなと思ってるうちに溜まりだす 台所のゴミといっしょだな せっせとレジ袋に詰め込んだら 旅に出るのが常套なんだろうけど 訪れがあれば去り行く後姿に萌えたりして 押入れから赤いザックを引っ張り出す

2012-08-16

柱の上を虹鱒が泳ぐ 風上に頭を向け 流れてくる雲を捉える 未来なんか要らなかったのだ 寄せ餌にと撒いた青空は 柱の上で秋風に揺れる

2012-08-15

遠くのほうから声がしたけど 聴こえないふりして 運河に架かった橋を渡る 西日に輝く水面は眩しくて 私はひとりだってことを忘れさせてくれる 寂しさとは違うけど 渡りきるには未だ早いから 日暮れ前 秋の予感と戯れる

2012-08-14

ダイスを転がすまでも無く 君と僕の人生は決まっていたのだから スポットライトの途絶えたリングの上で ふたり肩を組んで健闘をたたえ合うことに どれだけの意味を見出せば良いのだろう

2012-08-13

伸ばした手のひらをすり抜けるように グラスのなかで氷が弾けた 君と一緒だね ふちに付いた口紅を小指で拭い ふたりの間には何もなかったような顔して 物憂げなため息ひとつ そんな夜もあって良いものだと 満月はそ知らぬ顔して雲に隠れた (Full ver.)

2012-08-12

流れ星のかけらを拾った気がして あなたに逢えるかもなんて期待してみる 真夜中の噴水は小便小僧の寝顔みたいで 外灯下のベンチに座り あなたのくれた指輪にふれる

2012-08-11

夢の架け橋を渡ろうとして アキアカネ舞う小道を歩む 目深にかぶった麦藁帽子 つばを軽く持ち上げては振り返る 歩んできた人生 この道で間違っていないのかと 自らに問いて 乾いた喉を潤す 日暮れまではもう少し

2012-08-10

鉄の球を静かに転がす 分厚いガラス板の上 日の出の気配を背中に覚え 鈍い光を放つ鉄の球を転がす これが君と僕の記憶の全てなら ひとを信じることの難しさは巣立ち間近のひな鳥のようでもあり 風が恋しくて 君の残香のするシーツを畳む

2012-08-09

壊れたラッパを杖代わり 通いなれたはずの道程なのに 君の待つ部屋には辿りつけない この交差点を越えれば いつまでも青に変わらない信号機の下 傘もささず立ちつくし ぷふふふ 壊れたラップを吹き鳴らす 君のためにと吹き鳴らす (Full ver.)

2012-08-08

鍵穴から吹き出す風は生暖かく牝犬の臭いがした この鍵を差し込む歓びを求め どれだけ算段したことか 虹色の楽器をつま弾き 丘の上の風車は回り出す

2012-08-07

その交差点は涙で濡れていて ときたま誰かが滑って転ぶ もらい泣きほどの身勝手さじゃないけど 出がけに傘を持っていくか迷うとき 交差点の角に佇むひとりの老女に思いを馳せる

2012-08-06

月に1度その戸棚を開けて 慎ましく隠した分度器を下腹部にそえる おんなはおんなであることから逃げられないのだから 可愛らしいレースの縁取りも許される筈と 年甲斐もない色合いの言葉を書きとめる

2012-08-05

袖を通す度に取れかかったボタンに気付く 私の形に染まってくれたブラウス ハンガーにかければ もうひとりの君が其処にいるね 目ざといあなたはそんな言葉を囁き 背後から抱きしめる指先で私の心をまさぐった

2012-08-04

糸の切れた凧 どこまでも飛んでいかずに 力無く堤防の手前に落ちてしまう 自由って怖いのかな いつも友人の顔を窺う私がいるし 丸刈りの夏草に隠れ家を失った雲雀たち 戸惑い顔で群れを成す

2012-08-03

いつまでも取り込めない洗濯物 時折り迷い込む夏の風に煽られ 悪戯な彼のしぐさを思い出し 打ち水の手桶に休むアキアカネ 気のせいか日暮れの早さに影を追う

2012-08-02

石畳みの坂道を歩む 牛車の通った緩やかな坂道 木陰の恋しい季節ゆえ 躊躇うそぶりに額の汗を拭い あれは陽炎 いつしかの恋の残像

2012-08-01

貼り損ねた切手みたいだと言われた ミシン目通りには行かなかった私の人生 他人行儀な挨拶に終始した手紙のように 馬追いの青空は底抜けで はためく旗に肩透かしをくらう